基礎工事が終わったばかりの現地に、お客様を案内する。見えるのはコンクリートと鉄筋だけです。
建売住宅の販売では、完成するまでの数か月間、写真が撮れない期間がどうしても生まれます。その間もポータルサイトの掲載やチラシの配布は止められません。建売住宅のパースは、この「まだ見せるものがない期間」に、完成後の姿を先回りして伝えるための資料です。
この記事では、完成前のパースが役に立つ4つの場面と、外観・室内のどこを描くか、広告に使うときに押さえておきたい法律上の注意点、制作の進め方をまとめました。

完成前の建売で、パースが役に立つ理由
注文住宅は、施主と一緒に間取りや仕様を決めていく家です。打ち合わせの中でパースを見せ、迷っている部分を一緒に決めていきます。この使い方は注文住宅の打ち合わせでパースを活用する方法で紹介しています。
建売は違います。間取りも外壁も設備も、売り手がすでに決めています。購入を検討する方は、出来上がった商品を見比べて選びます。だからこそ、完成後の姿が見えない期間は、比較の土俵に上がりにくくなります。
ポータルサイトで物件を探す方は、まず写真で候補を絞り込みます。画像のない物件や、基礎だけの現場写真が並ぶ物件は、どうしても後回しにされがちです。完成前でも、完成後の姿を一枚で見せられるかどうかが、問い合わせの数を左右します。
パースが使える4つの場面
1. ポータルサイトと自社サイトの物件ページ
最も効果がわかりやすいのが、物件ページのメイン画像です。検索結果の一覧で最初に目に入るのは、外観の一枚です。完成後の外観パースを掲載しておけば、写真が撮れるまでの期間も、他の完成済み物件と同じ目線で比べてもらえます。
2. チラシと現地の看板
折込チラシやポスティングでは、紙面の一番大きな面積を外観の画像が占めます。現地に立てる看板も同じです。工事中の現場の前を通る人に、「ここにどんな家が建つのか」を見せられるのは、完成予想の一枚だけです。
3. 分譲地の区画案内
同じ分譲地で複数の棟を販売する場合は、建物1棟ごとの外観に加えて、街並み全体を見せる一枚が役立ちます。区画の位置関係や道路、公園との距離が伝わると、検討する方は自分の暮らしを具体的に想像できるようになります。分譲地全体を一枚で見せる方法は、鳥瞰パースとは何かを解説した記事でまとめています。
4. 営業担当の商談資料
モデルハウスや完成物件がない状況でも、営業担当の方がパースを見せながら説明できると、会話の解像度が上がります。外壁の色、窓からの光、駐車場の広さ。お客様が気になる点を、その場で画面や紙の上で一緒に確かめられます。

外観と室内、どこを描くか
建売の販売で最初に必要になるのは、外観の一枚です。正面から少し角度をつけ、駐車場や植栽といった外構まで含めて描くと、敷地を含めた暮らしのイメージが伝わります。郊外の物件なら、車が何台停められるかは購入の判断に直結するので、はっきり見せたいところです。
室内は、リビング・ダイニング・キッチンが一体になった空間を1枚描くのが基本です。間取り図だけでは伝わりにくい天井の高さや、窓からの光の入り方を見せられます。
同じ間取りで複数の棟を販売する場合は、外壁の色や素材を変えたバリエーションを用意する方法もあります。同じ3Dモデルを使うため、一から描き起こすより効率よく見せ方を増やせます。

建売住宅のパースで描き込みたい生活感
家具や人物をどこまで入れるかは、意外と悩むところです。何も置かれていない室内は広く見えますが、暮らしのイメージがわきにくくなります。反対に、家具を詰め込みすぎると、実際より狭い家だと受け取られることもあります。
おすすめは、ダイニングテーブルとソファなど、部屋の使い方がわかる最低限の家具を置き、人物は控えめにすることです。家族で過ごす時間が想像できる程度に留めると、見る人が自分の家族を重ねやすくなります。

広告に使うときの注意点
完成前の物件の広告には、守らなければならないルールがあります。
まず、広告を始められる時期です。宅地建物取引業法の第33条により、工事が完了していない建物は、建築確認などの処分を受けた後でなければ広告できません。パースが手元に揃っていても、それより前に掲載を始めることはできないので、制作のスケジュールは広告開始日から逆算して組むのが現実的です。
次に、表示の仕方です。不動産広告の表示については、不動産公正取引協議会が定める規約があります。完成予想図であることの表示や、実際の物件と違いが出やすい部分の扱いは、販売担当の方や広告の制作会社と確認しておくと安心です。完成予想図の考え方は、マンションの完成予想図をまとめた記事でも触れています。
パースを描く側としても、実際と違う姿を描かないことが大切です。隣地の建物を消して開放感を出す、植栽を実際より大きく描く、といった表現は、内覧に来た方の期待を裏切る原因になります。
制作の進め方と費用の目安
制作に入る前に、配置図、平面図、立面図、外壁や屋根の仕上げがわかる資料、外構計画を揃えていただけると、完成後の姿に近いパースを描けます。外壁材や設備の品番がわかれば、色味の再現度も上がります。
費用は、一戸建て住宅向けのGrade Bで1アングル40,000円(初回20,000円)が目安です。修正は3回まで含まれています。納品データは制作完了後2年間保存しているため、販売が進んでから別アングルを追加したい場合も、過去のデータを活かして進められます。
販売前の住宅を写真品質のビジュアルで見せる取り組みについては、販売前の住宅のビジュアル制作のご案内もご覧ください。戸建て全般でのパースの活かし方は、戸建て住宅の建築パースで成約率を高める方法で紹介しています。
よくあるご質問
Q. 着工前でもパースは作れますか?
A. 図面と仕様が決まっていれば、着工前から制作できます。広告への掲載は建築確認を受けた後になるため、掲載開始に間に合うようにスケジュールを組むのがおすすめです。
Q. 同じ間取りの棟がいくつかあります。何枚必要ですか?
A. 間取りが同じなら、室内は1枚を共通で使い、外観は外壁の色の違いがわかるように描き分けるのが効率的です。分譲地全体の配置を見せたい場合は、鳥瞰の1枚を加えると区画の違いも伝わります。
Q. 完成後の写真とパースに差が出たらどうなりますか?
A. 仕上げ材や外構が計画どおりなら、大きな差は出にくいものです。ただ、植栽の育ち方や周辺の建物など、完成時点で変わる部分もあります。広告では完成予想図であることを明記し、完成後は実際の写真に差し替えるのが確実です。
完成前の建売で一番困るのは、写真が撮れない期間に、他の完成済み物件と同じ土俵で比べてもらえないことです。外観と室内のパースがあれば、ポータルサイト、チラシ、区画案内、商談のどの場面でも、完成後の姿を先回りして伝えられます。広告の開始時期と表示のルールだけは、事前に確認しておきましょう。
Basic9studioで制作している建売・分譲住宅向けのパースは建築パース制作サービスで、販売期間中に追加できる動画やVR360はサービス一覧にまとめています。図面と販売開始の予定日が決まったら、お問い合わせフォームからご相談ください。
