完成予想図とは、建物が完成した後の姿を設計図面をもとにCGで描いた画像のことです。マンションの販売では、建物が建つ前に契約が進む「青田売り」が一般的なため、検討者が物件の外観や共用部を確認できる手段は完成予想図に限られます。チラシや物件サイト、モデルルームの壁面に掲示されている建物の画像は、ほぼすべてこれにあたります。
完成予想図は、単に見栄えの良いCGであればよいというものではありません。広告物として不動産の表示に関するルールに従う必要があり、竣工後に「画像と違う」という指摘を受けない精度も求められます。
この記事では、「完成予想図 マンション」をテーマに、マンションの完成予想図について、媒体ごとに必要になる種類、広告として使う際の表示ルール、設計変更やスケジュールに関する注意点、依頼時に用意する資料を、大規模物件のパースを制作している立場からご説明します。

目次
マンションの完成予想図が使われる媒体と、必要になる種類
同じ物件でも、掲載する媒体によって求められる画像は異なります。販売計画の段階で媒体を洗い出しておくと、必要なカットを一度にまとめて制作でき、費用と期間を抑えられます。
| 媒体 | よく使われる完成予想図 | 求められる品質 |
|---|---|---|
| チラシ、新聞折込、ポスター | 外観の全景(昼または夕景)、エントランス | 印刷に耐える高解像度。色校正あり |
| 物件サイト、ポータルサイト | 外観、エントランス、共用部、住戸内観、周辺の俯瞰 | 画面向けの色調整。カット数が多い |
| モデルルームの壁面パネル | 外観の大判、ラウンジやゲストルームなどの共用部 | 大判印刷に耐える解像度。細部の作り込み |
| 駅貼り、屋外看板 | 遠くからでも印象に残る外観1カット | 構図の強さ。文字を載せる余白の確保 |
| 営業用の説明資料 | 住戸タイプごとの内観、眺望の想定図 | 正確さ重視。仕様の違いがわかること |
マンションのパース制作全般の考え方は、「マンション・高層ビルの建築パース制作」でご紹介しています。本記事は、その中でも広告用途に絞った内容です。

完成予想図の精度が販売に与える影響
完成予想図は、検討者が物件に抱く最初の印象を決めます。同時に、契約後のトラブルを防ぐ役割も持っています。制作の現場で意識しているのは、次の3点です。
資料請求と来場を左右する
物件サイトを開いて最初に目に入るのは、価格でも間取りでもなく外観の完成予想図です。外壁の素材感、エントランスの雰囲気、周辺の街並みとのなじみ方が伝わるかどうかで、資料請求に進む割合が変わります。
竣工後の「画像と違う」を防ぐ
完成予想図と実物の差が大きいと、引き渡し時に不満が生じ、場合によっては契約上の問題に発展します。外壁タイルの色、バルコニーの手すりの素材、植栽の量など、実際と異なりやすい部分ほど、設計図と仕上げ表に忠実に描く必要があります。
広告審査を通りやすくする
販売会社や広告代理店には、広告物を出稿前に確認する審査の工程があります。表示ルールに沿った注記があらかじめ入っている完成予想図は、この工程での差し戻しが少なく、販売開始のスケジュールを守りやすくなります。

完成予想図を広告に使うときの表示ルール
マンションの広告は、不動産の表示に関する公正競争規約と景品表示法の下にあります。完成予想図に関して制作側が特に気をつけている点は、次のとおりです。
- 完成予想図であることを明示する。画像内または近くに「完成予想図」の表記を入れ、実際とは異なる場合がある旨を添えます。
- 周辺の状況を現況と異なるように描かない。存在しない公園や、実際より広い道路を描くことはできません。
- 省略した要素は注記する。電柱や電線、隣接する建物を省いた場合は、その旨を記載します。
- 植栽は成長後の姿である旨を伝える。竣工時には完成予想図ほど育っていないことを注記するのが一般的です。
- 眺望や日照を保証する表現を避ける。住戸からの眺望を描く場合は、階数と方角を明記し、将来変わる可能性を添えます。
注記の具体的な文言は、販売会社の審査部門や所属する不動産公正取引協議会の基準に合わせる必要があります。制作会社としては、注記を載せる位置と余白をあらかじめ設計に含めておくことで、審査後の差し替えを減らしています。

完成予想図 マンション制作で失敗しないための注意点
マンションの完成予想図は、戸建てのパースに比べて関係者が多く、制作期間中に設計が変わることも珍しくありません。次の点を最初に決めておくと、手戻りを減らせます。
- 図面の版を固定する。どの日付の図面をもとに描くかを決め、変更があった場合は差分と適用の可否を都度確認します。
- 周辺環境の扱いを決める。現地写真との合成にするのか、CGで街並みを作るのかで、必要な資料と費用が変わります。
- 時間帯を決める。昼景は外壁の色が正確に伝わり、夕景は窓明かりで居住の雰囲気が伝わります。媒体ごとに使い分けるのが一般的です。
- スケジュールを逆算する。外観1カットで10営業日から15営業日、複数カットのフルセットでは1か月以上が目安です。広告審査と修正の期間を含め、販売開始の2か月から3か月前にご相談いただくと余裕を持って進められます。
- 確認者を決める。設計、販売、広告代理店のそれぞれから意見が届く場合は、取りまとめる担当者を一人決めていただくと修正が整理されます。
納期の考え方の詳細は、「建築パースの納期はどれくらい?」にまとめています。
依頼時に用意する資料
完成予想図の精度は資料で決まります。マンションの場合、次の資料を揃えていただくと、初回の提出から実物に近い画像をお出しできます。
- 意匠図一式。配置図、各階平面図、立面図、断面図、矩計図。
- 外構図と植栽計画図。
- 外装の仕上げ表と、タイルや塗装の色見本または品番。
- 敷地周辺の現地写真。想定する視点位置から撮影したものがあると構図の検討が早くなります。
- 掲載媒体の一覧とサイズ。印刷物の寸法や、ウェブでの表示サイズ。
- 注記の文言と入れる位置についての社内ルール。

Basic9studioの大規模物件への対応
Basic9studioは福岡を拠点に、日本とベトナムの2拠点体制でマンションや高層ビルの完成予想図を制作しています。建築教育を受けたスタッフが意匠図を読み取り、外装材の表現と周辺環境の再現を担当します。複数カットを並行して進められる体制のため、販売開始に合わせた一括納品にも対応しています。そのほかのサービスはサービス一覧にまとめています。
制作事例と対応範囲は、マンション・高層ビルのパース制作サービスのページでご確認いただけます。低層の分譲住宅や外構を含む外観については、外観パース制作サービスもご覧ください。
よくあるご質問
何カットくらい用意するのが一般的ですか
中規模のマンションでは、外観2カット(昼と夕景)、エントランス1カット、共用部1カットから2カット、住戸内観1カットから2カットの合計5カットから8カットが多い構成です。物件サイトを充実させる場合は、これに周辺の俯瞰や眺望の想定図が加わります。
制作中に設計変更が入った場合はどうなりますか
変更の内容と時点によって対応が異なります。モデリング中であれば軽微な追加費用で反映できますが、レンダリング後の変更は再制作に近い作業になることがあります。変更の可能性がある部位は、事前にお知らせいただければ後から差し替えやすい形で制作します。
電柱や電線を消しても問題ありませんか
省略すること自体は一般的に行われていますが、その旨の注記が必要です。省略した要素と注記の文言は、販売会社の審査基準に合わせてご確認ください。
費用はどのくらいを見ておけばよいですか
当社では、広告用の完成予想図は1カットあたりGrade A(60,000円から)またはGrade S(100,000円から)でお受けすることが多く、周辺環境の作り込みの量やカット数によって変動します。複数カットを同時にご依頼いただく場合は、モデルを共用できるため1カットあたりの費用を抑えられます。
まとめ
マンションの完成予想図は、竣工前販売において検討者が建物を知る唯一の手がかりであり、同時に表示ルールに従うべき広告物です。媒体ごとに必要なカットを整理し、図面の版と注記のルールを最初に決めておくことで、販売開始に間に合う精度の高い画像を用意できます。
販売計画と図面の準備状況をお知らせいただければ、必要なカット構成とスケジュールをご提案いたします。設計が固まりきっていない段階でのご相談も承っています。ご相談はお問い合わせフォームからお送りください。
