建築ウォークスルー動画とは、CGで作った建物の中をカメラが歩くように進み、空間を連続して見せる映像のことです。玄関を入り、廊下を抜け、リビングに出て、窓の外の景色に目を向ける。実際に建物を歩いたときの体験を、建物が完成する前に伝えられます。
住宅会社やマンションの販売会社から、静止画のパースに加えて動画を求められる場面が増えています。一方で、費用がどのくらいかかるのか、静止画やVRと何が違うのかがわかりにくい、というお声もよくいただきます。
この記事では、「ウォークスルー動画 建築」をテーマに、建築ウォークスルー動画の特徴、住宅とマンションでの活用例、制作費用を左右する要素、制作の流れと期間、そして発注前に決めておいていただきたいことを、制作会社の立場から順にご説明します。

目次
建築ウォークスルー動画の特徴と、静止画やVRとの違い
静止画のパースは、一つの視点から見た一瞬を切り取ります。ウォークスルー動画は、視点が移動する過程そのものを見せます。天井の高さの変化、部屋から部屋へのつながり、窓の外の景色が現れる瞬間といった「空間の流れ」は、動画でなければ伝わりにくいものです。
| 比較項目 | 静止画パース | ウォークスルー動画 | VR360パース |
|---|---|---|---|
| 見る人の操作 | 不要 | 不要。再生するだけ | 自分で視点を動かす |
| 伝わること | 構図と仕上げの細部 | 空間のつながりと広がり、生活の流れ | 部屋ごとの全方位の様子 |
| 向いている媒体 | チラシ、サイト、パネル | SNS広告、サイトの冒頭、商談の導入 | 物件サイト、オンライン内見 |
| 制作期間の目安 | 5営業日から15営業日 | 3週間から6週間 | 2週間から4週間 |
| 費用感 | 1カット数万円から | 住宅1棟で数十万円台から | 1住戸で数十万円台から |
三つは競合するものではなく、役割が異なります。見る人に操作をさせずに短時間で印象を残したい場面では動画が、じっくり比較検討してほしい場面ではVRが向いています。VR側の導入判断については、「バーチャルモデルルームとは?」で詳しくご説明しています。

住宅でのウォークスルー動画の活用例
注文住宅の間取り承認前の最終確認
図面と静止画で打ち合わせを重ねても、施主様が「玄関からキッチンまでの動線」や「吹き抜けの見上げ」を実感するのは難しいものです。着工前に1分程度のウォークスルー動画を確認していただくと、生活の流れの中で気づく修正点が早い段階で出てきます。着工後の変更に比べれば、この段階での修正は費用も期間もわずかで済みます。
建売住宅や分譲地の販売動画
完成前の建売住宅は、内覧ができないために検討から外れやすい商品です。外観から玄関、LDK、2階の主寝室までを30秒から60秒でつないだ動画を物件ページに置くと、現地に行く前の候補に残りやすくなります。SNS広告に流用する場合は、縦型で短い版を同時に制作する方法が一般的です。
リノベーション提案
既存の間取りを変更する提案では、壁を取り払った後の広がりを言葉で伝えるのは困難です。現況写真から始まり、改修後のCG空間へ移っていく構成の動画は、変更の効果をそのまま示せます。

マンションでのウォークスルー動画の活用例
竣工前の物件サイトとSNS広告
竣工前販売では、動画が物件サイトの冒頭に置かれることが多くなりました。エントランスを入り、ラウンジを抜け、エレベーターで上がって住戸に入る、という一連の流れは、共用部の価値と住戸の魅力を同時に伝えられます。
モデルルームでの上映
実物のモデルルームで再現できるのは1タイプか2タイプに限られます。来場者の待合や商談の冒頭で、他のタイプや上層階からの眺望を動画で見せることで、モデルルームにない住戸の検討も進めやすくなります。
賃貸マンションの先行募集
竣工前に入居者を募集する賃貸物件では、内見ができないことが最大の障壁です。代表的な間取りのウォークスルー動画をポータルサイトや自社サイトに掲載すると、遠方からの申し込みも受けやすくなります。

ウォークスルー動画 建築の制作費用の目安
費用は、動画の長さ、カメラが通る範囲、画質のグレード、音の演出でほぼ決まります。住宅1棟の30秒から1分程度の動画であれば、数十万円台が中心的な価格帯です。マンションで共用部から住戸までを含む長尺の動画や、広告用にフォトリアルの品質を追求する場合は、百万円台になることもあります。
見積もりの際に確認している項目は次のとおりです。
- 尺(秒数)と、その中で見せる部屋の数
- カメラが通る範囲。住戸内だけか、外観や共用部を含むか
- 画質のグレード。社内確認用か、広告掲載用か
- BGM、ナレーション、字幕やテロップの有無
- 納品形式。横型と縦型の両方が必要か、解像度はどこまで必要か
- 静止画パースと同時に依頼するか。モデルを共用できるため、静止画側の費用を1割から3割ほど抑えられることが多いです
制作の流れと期間
標準的な流れは次のとおりで、資料が揃った状態から3週間から6週間が目安です。静止画より長くかかるのは、カメラの動きの設計と、静止画の数百倍にあたる枚数のレンダリングが必要になるためです。
- ヒアリング。用途、尺、見せたい順番、公開媒体を確認します。
- 絵コンテの作成。カメラの経路と各シーンの秒数を図面上で示し、ご確認いただきます。
- モデリングと素材設定。静止画パースと同じ工程です。
- プレビューの確認。低画質の動画でカメラの動きと速さを確認していただきます。ここでの修正は費用がかかりません。
- 本レンダリングと編集。BGMやテロップを入れ、指定の形式で納品します。
使用日が決まっている案件は、2か月前のご相談をおすすめしています。納期全般の考え方は「建築パースの納期はどれくらい?」をご覧ください。
発注前に決めておきたいこと
動画は静止画と違い、途中での大きな変更が費用と期間に直結します。次の点を社内で決めてからご依頼いただくと、プレビュー後の修正を最小限にできます。
- 主役の空間。1本の動画で最も見せたい場所を一つ決めると、構成が引き締まります。
- 尺と媒体。ウェブサイトなら60秒から90秒、SNS広告なら15秒から30秒の縦型が目安です。
- 間取りと仕上げの確定度。未確定の部分がある場合は、その部位を目立たせない経路にする配慮ができます。
- 音の方針。BGMのみか、ナレーションを入れるか。ナレーションを入れる場合は原稿の作成者も決めておきます。
- 確認者と確認の回数。プレビューと本編でそれぞれ誰が確認するかを決めておくと、進行が止まりません。

Basic9studioの建築ウォークスルー動画制作
Basic9studioは福岡を拠点に、日本とベトナムの2拠点体制で建築アニメーションとVR360パースを制作しています。建築教育を受けたスタッフが図面から空間を組み立て、静止画で培った光と素材の表現を動画に引き継いでいます。絵コンテの段階から一緒に構成を考える進め方を大切にしています。そのほかのサービスはサービス一覧にまとめています。
サービス内容と制作事例は、建築アニメーション制作サービスのページでご確認いただけます。動画の活用シーン全般については「建築アニメーション動画の活用術」をご覧ください。
住戸の中をじっくり見せたい場合は、VR360建築パース制作サービスもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
SNS用の縦型動画も同時に作れますか
作れます。横型と縦型では画面に入る範囲が変わるため、同じ経路でもカメラの設定を調整します。最初から両方をご依頼いただくと、別々に制作するより費用を抑えられます。
制作の途中で間取りが変わった場合はどうなりますか
プレビュー確認の前であれば、モデルの修正で対応できます。本レンダリングの後に変更が入ると、該当するシーンを作り直す必要があるため、追加の費用と期間が発生します。変更の可能性がある場合は、事前にお知らせください。
人物や車、家具の動きは入れられますか
入れられます。歩く人物や走る車、揺れるカーテンなどは、空間に生活感を与えます。ただし要素が増えるほどレンダリングの時間は延びますので、必要な場面に絞ってご提案しています。
納品の形式と解像度を教えてください
標準はフルHD(1920×1080)のMP4形式で、4Kでの納品も可能です。大型モニターやプロジェクターでの上映を予定されている場合は、事前にお知らせいただければ解像度と圧縮の設定を合わせます。
おわりに
建築ウォークスルー動画は、空間のつながりと生活の流れを、見る人に操作をさせずに伝えられる映像です。住宅では着工前の最終確認や販売ページに、マンションでは竣工前の物件サイトやモデルルームでの上映に向いています。費用は尺と範囲と品質で決まり、静止画パースと同時に依頼することで総額を抑えられます。
用途と尺、公開の時期をお知らせいただければ、絵コンテの段階から構成をご提案いたします。静止画と動画を組み合わせた進め方についても、お気軽にご相談ください。ご相談はお問い合わせフォームからお送りください。
