バーチャルモデルルームとは、CGで再現した住戸の内部を、パソコンやスマートフォンの画面上で内見できる仕組みのことです。実際にモデルルームを建てる代わりに、あるいは実物のモデルルームを補う形で、マンションや戸建て、賃貸住宅の販売と募集に使われています。

検討している方にとっての関心は、いくらかかるのか、実際に集客や成約につながるのか、という2点に集まります。この記事では、バーチャルモデルルームの方式ごとの違い、費用の決まり方、販売の現場でどのように効果が出るのか、そして導入までの流れを、制作会社の立場から順にご説明します。

VR360パースの技術的な仕組みについては、「VR360建築パースとは」で解説しています。本記事は、導入を判断する立場の方に向けた内容です。

バーチャルモデルルームで内見できる住戸のリビングCG
バーチャルモデルルームで内見できる住戸のリビングCG

バーチャルモデルルームの3つの方式

一口にバーチャルモデルルームと言っても、方式によって操作感、制作期間、費用が異なります。現在よく使われているのは次の3つです。

方式見え方と操作制作期間の目安向いている用途
360度パノラマ型(VR360パース)部屋の各所に置いた視点から360度を見回し、視点間を移動する1住戸で2週間から4週間マンションの全タイプ紹介、ウェブサイトへの掲載
ウォークスルー動画型決められた経路をカメラが歩くように進む映像。操作は不要3週間から6週間広告、SNS、来場前の説明
リアルタイム3D型ゲームのように自由に歩き回り、家具や仕上げをその場で切り替える1か月半から3か月以上大型物件のセールスラウンジ、注文住宅の仕様決め

費用と導入のしやすさのバランスが取れているのは、360度パノラマ型です。閲覧する方はブラウザでリンクを開くだけで、専用の機材やアプリは必要ありません。この記事で費用や効果を述べる際は、特に断りがない限り360度パノラマ型を前提にしています。

視点を設定して360度で見回せる寝室の内観CG
視点を設定して360度で見回せる寝室の内観CG

バーチャルモデルルームの導入費用はどう決まるか

費用は「何住戸を、何か所の視点で作るか」でほぼ決まります。1住戸をリビング、キッチン、主寝室、洗面、玄関の5視点で構成する場合が標準的で、この構成であれば数十万円台が中心です。住戸タイプが増えるほど総額は上がりますが、共通する仕上げや家具のデータを使い回せるため、1タイプあたりの単価は下がります。

費用を左右する要素を整理すると、次のようになります。

  • 住戸タイプの数と、タイプごとの視点の数
  • 家具コーディネートの切り替え(ナチュラル、モダンなど複数案)
  • 昼と夜など時間帯の切り替え
  • 間取り図との連動、設備説明のポップアップなどの機能
  • 画質のグレード(検討用か、広告掲載用か)
  • 公開用サーバーの利用料と公開期間

実物のモデルルームは、内装工事に数千万円、さらに会場の賃料や運営スタッフの人件費がかかり、販売終了後には解体費用も発生します。バーチャルモデルルームはこの数十分の一の予算で導入でき、データは次の物件や別の販売期にも活用できます。費用対効果を比較する際は、建設費だけでなく運営費と解体費まで含めて考えることをおすすめします。

実物のモデルルームでは再現しにくい浴室の仕上げをCGで確認する例
実物のモデルルームでは再現しにくい浴室の仕上げをCGで確認する例

バーチャルモデルルームの集客効果

費用を抑えられても、集客につながらなければ意味がありません。販売の現場で効果が出やすいのは、次の4つの場面です。

販売開始前から内見を受け付けられる

モデルルームの完成を待たずに、物件サイトや資料請求の返信メールで内見の機会を提供できます。竣工前販売では、検討者が建物を「見る」手段がCGしかありません。早い段階から住戸の中を見せることで、資料請求から来場までの離脱を減らせます。

来場前に比較検討が進み、商談の質が上がる

事前に複数の住戸タイプを見比べた方は、来場時にすでに候補を絞っています。営業担当は間取りの説明に時間を使う代わりに、資金計画や引き渡し時期といった具体的な話に入れます。滞在時間あたりの成約率が上がる、という声を販売会社の方からよく伺います。

遠方や海外の検討者を逃さない

転勤に伴う住み替えや投資目的の購入では、現地に来られない方が一定数います。バーチャルモデルルームがあれば、オンライン商談の画面共有でそのまま内見を進められます。海外の投資家向けには、多言語の説明を添えて公開する方法もあります。

全タイプとオプション仕様を見せられる

実物のモデルルームで再現できるのは、代表的な1タイプか2タイプに限られます。バーチャルモデルルームでは、角住戸や最上階、標準仕様とオプション仕様の違いまで用意できます。「自分が買う部屋」を見られることが、検討者の安心感につながります。

夕景の光を切り替えて見せられるバーチャルモデルルームの一例
夕景の光を切り替えて見せられるバーチャルモデルルームの一例

導入を成功させるために決めておきたいこと

同じ予算をかけても、事前の整理次第で成果に差が出ます。ご依頼の前に、次の点を社内で決めておくと進行がスムーズです。

  • 主な目的。資料請求を増やしたいのか、来場後の成約率を上げたいのかで、公開先と作り込む視点が変わります。
  • 実物のモデルルームとの役割分担。実物は素材の手触りと接客、バーチャルは全タイプの比較、というように分けると投資が重複しません。
  • 公開する場所。物件サイト、資料請求後のメール、来場予約ページ、店頭のタブレット、チラシのQRコードなど。
  • 広告表示への配慮。竣工前の物件では、CGである旨と、実際とは異なる場合がある旨の注記を画面内に入れます。
  • 更新の予定。販売期ごとの家具変更や、完売住戸の非表示など、公開後の運用も最初に決めておきます。

制作の流れと必要な期間

360度パノラマ型の場合、標準的な流れは次のとおりです。1住戸5視点の構成で、資料が揃った状態から2週間から4週間が目安です。

  1. ヒアリングとお見積もり。対象住戸、視点の数、公開先、公開時期を確認します。
  2. 資料のご提出。平面図、展開図、仕上げ表、家具や色の方向性がわかる参考画像をいただきます。
  3. モデリングと視点の設定。各視点の位置を図面上でご確認いただきます。
  4. レンダリングと初回確認。静止画の状態で仕上げと家具をチェックしていただきます。
  5. ビューアーへの組み込みと納品。視点間の移動や注記を設定し、公開用のリンクをお渡しします。

必要な資料の考え方は静止画の建築パースと共通です。詳しくは「建築パースの依頼に必要な図面・資料一覧」をご覧ください。販売開始日が決まっている案件では、遅くとも公開の1か月半前にご相談いただくと、修正の時間を確保できます。

家具コーディネートを差し替えて提案できるラウンジ空間のCG
家具コーディネートを差し替えて提案できるラウンジ空間のCG

Basic9studioのバーチャルモデルルーム制作

Basic9studioは福岡を拠点に、日本とベトナムの2拠点体制でVR360パースと建築アニメーションを制作しています。建築教育を受けたスタッフが図面を読み取り、素材と光の表現にこだわった住戸を再現します。閲覧用のビューアーは、スマートフォンとパソコンの両方で動作するものをご用意しています。そのほかのサービスはサービス一覧にまとめています。

サービス内容と制作事例は、VR360建築パース制作サービスのページでご確認いただけます。広告用のウォークスルー動画との組み合わせをご希望の場合は、建築アニメーション制作サービスもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

VRゴーグルは必要ですか

必要ありません。360度パノラマ型はブラウザで閲覧できるため、スマートフォンやパソコンがあれば十分です。VRゴーグルに対応させることも可能で、販売センターでの体験用として併用されるお客様もいらっしゃいます。

1住戸だけでも依頼できますか

ご依頼いただけます。戸建ての分譲や賃貸の1室から対応しています。マンションで複数タイプをご検討の場合は、まず代表タイプを1住戸作成し、反応を見てから追加する進め方も可能です。

公開後に家具や仕上げを変更できますか

変更できます。3Dデータを保管しているため、家具の入れ替えや壁紙の変更は、最初から作り直すよりも短い期間と費用で対応できます。販売期ごとの更新を前提にした料金のご相談も承っています。

不動産ポータルサイトにも掲載できますか

ポータルサイトによって、外部リンクや埋め込みの可否が異なります。自社の物件サイトに設置し、ポータルからはそこへ誘導する方法が一般的です。掲載先が決まっている場合は、事前にお知らせいただければ形式を合わせて納品します。

まとめ

バーチャルモデルルームは、実物のモデルルームより大幅に低い予算で、販売開始前から全タイプの住戸を見せられる販売ツールです。導入の効果は、目的と公開先をあらかじめ決めておくかどうかで大きく変わります。

販売計画の段階でご相談いただければ、住戸タイプの選び方や視点の数、公開のスケジュールまで含めてご提案いたします。物件の概要と販売開始の時期をお知らせください。ご相談はお問い合わせフォームからお送りください。