外観3枚、内観5枚。最初にそう決めて発注したのに、実際に使ったのはチラシの表面とWebサイトのトップの2枚だけだった。
建築パースの枚数では、こうしたことが起こりがちです。反対に、販売が始まってから「眺望のカットも欲しかった」と気づく場合もあります。建築パースは何枚必要か。その答えは建物の大きさではなく、パースを使う場面の数で決まります。
この記事では、戸建て・マンション・店舗の用途別に、無駄のない枚数の考え方と予算の組み方をまとめました。

目次
枚数は「使う場面」から逆算する
枚数を決めるときの出発点は、そのパースをどこで、誰に見せるかです。
施主との打ち合わせ資料、販売用のチラシ、Webサイト、現地の看板、行政への説明資料。場面ごとに、見る人が知りたいことは違います。施主は自分の家の中での暮らし方を、購入検討者は外観の印象と立地を、行政は周辺との関係を見ています。
考え方の軸は「1枚に1つの役割」です。役割が重なっているカットは、どちらか1枚で足ります。役割が空いている場面があれば、そこが追加すべきカットです。
用途別の枚数の目安
用途別に、基本となる構成の一例をまとめました。あくまで出発点で、計画の規模や販売の方法によって増減します。
| 用途 | 基本の構成 | 枚数の目安 | 追加を検討するカット |
| 注文住宅の打ち合わせ | 外観の正面、LDK | 2枚 | 外観の夕景、キッチンや水回り |
| 建売・分譲住宅の販売 | 外観、LDK | 2〜3枚 | 街並みの鳥瞰(分譲地の場合) |
| マンションの販売 | 外観、エントランス、代表住戸のLDK | 3〜5枚 | 眺望、共用ラウンジ、鳥瞰 |
| 店舗・商業施設 | 外観、店内のメインの売り場や客席 | 2〜3枚 | 夜景、駐車場を含む鳥瞰 |
表を見ると、多くの用途で「外観1枚と内観1枚」が基本になっていることがわかると思います。そこから先は、その案件で特に伝えたいものがあるかどうかで決まります。
戸建て住宅の場合
注文住宅の打ち合わせでは、施主の方が判断に迷いやすいのは外観より内観です。間取りの広さ、キッチンからの見え方、階段まわりの雰囲気。外観は正面の1枚に絞り、そのぶんLDKをしっかり見せるほうが、打ち合わせは前に進みます。
建売住宅や分譲住宅の販売では、外観が集客の入り口になります。分譲地で複数の棟を同時に売る場合は、1棟ずつ外観を描くより、街並み全体の鳥瞰を1枚入れたほうが効率的なこともあります。戸建てのパースの使い方は、戸建て住宅の建築パースで成約率を高める方法でも紹介しています。

マンションの場合
マンションは、外観だけでなく共用部が物件の印象を大きく左右します。エントランスホールの1枚は、ほぼ必須と考えてよいでしょう。住戸の内観は、すべてのタイプを描くより、代表的な1タイプのLDKに絞るのが一般的です。
高層階の住戸を売りにする場合は、眺望のカットを加えるかどうかが検討ポイントになります。完成予想図の種類と使い分けは、マンションの完成予想図をまとめた記事で詳しく解説しています。

店舗・商業施設の場合
店舗では、外観と店内の両方が必要になることが多いです。外観は通りからの見え方や看板の位置を、店内は売り場の広さや客席の雰囲気を伝えます。郊外型の店舗では、駐車場の入りやすさを見せるために鳥瞰を加えることもあります。
夜の営業がある店舗なら、夜景の外観も候補に入ります。昼と夜で印象が大きく変わる建物ほど、効果がわかりやすいカットです。

1つの案件で、カットはどう組み合わさるか
実際の案件で、カットがどのように組み合わさるかを見てみます。当社が制作した静岡の金融機関の店舗では、交差点側から見た夕景の外観に加え、別アングルの外観と、交差点と駐車場を含めた鳥瞰があります。以下はそのうちの2カットです。


3枚を並べると、役割の違いがよくわかります。交差点側の外観は建物の顔、駐車場側の外観は車で来る方の目線、鳥瞰は敷地と道路の関係です。同じ外観でも、見せたいものが違えば別のカットとして意味を持ちます。逆に、同じ方向から少し角度を変えただけのカットを何枚並べても、伝わる情報はほとんど増えません。
どの視点を選ぶかの考え方は、建築パースの視点戦略の記事にまとめています。
枚数を増やさずに、見せ方を増やす方法
予算が限られているときは、アングルの数を増やす前に、次のような方法も検討してみてください。
一つは、同じアングルで時間帯を変えることです。昼の外観と夕景の外観は、カメラが同じでも印象がまったく違います。新しい視点を足すより、伝えたい雰囲気の違いがはっきり出ることがあります。
もう一つは、トリミングを前提にした構図にすることです。横長の外観パースを、余白を持たせて描いておけば、Webのメイン画像とSNSの正方形の投稿の両方に使えます。媒体の数だけアングルを用意する必要はありません。
そして、色や素材の比較です。外壁の色を2案で迷っている段階なら、同じアングルのまま素材だけを変えた比較のほうが、別のアングルを追加するより判断に役立ちます。
予算は「1アングルの単価×枚数」で組み立てる
当社の静止画パースは、Gradeごとに1アングルあたりの料金を決めています。
- Grade B(一戸建て住宅向け):1アングル40,000円(初回20,000円)
- Grade A(商業施設・高層住宅向け):1アングル60,000円(初回30,000円)
- Grade S(ヴィラ・別荘・最高峰グレード):1アングル100,000円(初回50,000円)
いずれのGradeも修正は3回までです。詳しくは建築パース外注のご案内ページに掲載しています。
たとえばマンション販売の基本構成として、Grade Aで外観・エントランス・LDK・眺望の4カットを制作する場合、60,000円×4で240,000円が目安になります。注文住宅の打ち合わせ用に、Grade Bで外観とLDKの2カットなら80,000円です。まず使う場面からカット数を決め、そこにGradeの単価を掛けると、予算の全体像がすぐに見えてきます。
料金が決まる仕組みについては、建築パースの費用相場をまとめた記事もあわせてご覧ください。
建築パースは何枚?迷ったら、基本の2〜3枚から始める
枚数で迷ったときは、まず用途に合った基本の2〜3枚を決め、打ち合わせや販売の反応を見てから追加を考えるのが無駄のない進め方です。
最初から多めに発注して使わないカットが残ると、そのぶんの予算は戻ってきません。ただ、後から追加する可能性があるなら、最初の相談の段階でその見込みを伝えておくと、全体の段取りを組みやすくなります。
よくあるご質問
Q. 外観と内観、どちらを優先すべきですか?
A. 見る人が何を判断するかで決まります。注文住宅の施主の方なら内観、分譲住宅や店舗の集客なら外観が先です。迷う場合は、両方1枚ずつから始めるのが無難です。
Q. 1枚だけ依頼しても意味はありますか?
A. あります。役割を一つに絞れば、1枚でも十分に機能します。たとえば販売チラシの表面だけなら、外観1枚で足りる場合も多いです。
Q. Gradeはどう選べばいいですか?
A. 建物の種類が目安になります。一戸建て住宅はGrade B、商業施設や高層住宅はGrade A、ヴィラや別荘など最高峰の表現が求められる案件はGrade Sです。
建築パースの枚数は、建物の大きさではなく、使う場面の数で決まります。1枚ごとに役割を決め、重なっているカットは削り、空いている場面にだけ足していく。この考え方で組み立てると、多くの案件は2〜5枚に収まります。迷ったときは基本の2〜3枚から始め、反応を見て追加するのが一番無駄のない進め方です。
Basic9studioの各Gradeの特長と価格帯は料金とサービスのご案内で、静止画パース以外の制作メニューはサービス一覧でご確認いただけます。使う場面と必要なカットがある程度見えてきたら、お問い合わせフォームからご相談ください。
