内製では難しい環境表現を外注で実現した大規模プロジェクトの建築パース
内製では難しい環境表現を外注で実現した大規模プロジェクトの建築パース

若手の設計スタッフにパースを頼んだら、3日かかった。できた絵は悪くない。でもその3日間、彼の設計業務は完全に止まっていた。こういう経験をお持ちの設計事務所や工務店は、多いと思います。

建築パース 内製 外注のどちらを選ぶか。答えを先に言うと、判断の軸は「月に何枚、どんな品質の絵が必要か」です。量と品質要求で、損益分岐点がはっきり分かれます。この記事では、外注を受ける側である私たちが、あえて内製の利点も含めて本音で比較します。

内製の本当のコストを分解する

内製のコストはソフト代だけではありません。全部並べると、こうなります。

  • ソフトウェア費。3ds MaxとV-Ray、あるいはLumionなど。構成によりますが、商用ライセンスで年間数十万円が相場です。
  • ハードウェア費。レンダリングに耐えるワークステーションとGPU。導入で数十万円、数年ごとに更新が必要です。
  • 人件費と教育費。ソフトが使えることと、売れる絵が作れることの間には距離があります。実務レベルまでの育成には年単位の時間がかかります。
  • いちばん見落とされるのが機会費用です。設計者がパースを作っている時間、設計は進んでいません。冒頭の3日間は、パース1枚の値段ではなく、設計3日分の値段です。

月に10枚以上を安定して作り続けるなら、この投資は回収できます。月に2、3枚なら、1枚あたりの実質コストは外注の見積もりよりずっと高くつくのが普通です。

コスト、品質、納期、柔軟性。4つの軸で比較

軸 内製 外注
初期コスト高い。ソフト、機材、採用と教育ゼロ。1枚から発注できる
1枚あたりのコスト枚数が多いほど安くなる枚数に比例。ただし機会費用が発生しない
品質担当者の腕に依存。属人化しやすい専門チームの水準で安定。フォトリアルに強い
納期すぐ着手できるが、本業と競合する繁忙期は要調整。体制のある会社なら安定
急な修正社内で即対応できるのが強み往復の時間がかかる。ルール次第

表を見てわかる通り、どちらかが全面的に勝つ話ではありません。だから「どちらが得か」は、自社の案件構成に当てはめて初めて答えが出ます。

月間の必要枚数が多い商業案件は建築パースの外注メリットが大きい
月間の必要枚数が多い商業案件は建築パースの外注メリットが大きい

内製が向いているケース

  • 月10枚以上をコンスタントに使う。分譲や建売を多く手がけ、パースが常に回っている会社です。
  • 検討用のラフが大量に要る。設計プロセスの中で、社内確認のスケッチ的な絵を日常的に回す事務所です。
  • BIMを軸に運用している。設計データからそのまま絵を出す体制ができているなら、内製の効率は高いです。

外注が向いているケース

  • 販売や広告に使う勝負の1枚。フォトリアルの水準は、専業チームの経験量がものを言います。
  • 繁忙期の波を吸収したい。社内の手が回らない時期だけ外に出す使い方は、固定費を増やさずに山を越えられます。
  • 動画やVRなど、静止画の外の領域。機材もスキルも別物なので、単発案件のために内製化するのは割に合いません。
  • 設計者の時間を設計に戻したい。パース作業で残業が生まれているなら、それは外注検討のサインです。

建築パース 内製 外注の現実解はハイブリッド運用

実際に多くの事務所が落ち着くのは、内製と外注の併用です。検討用のラフは社内でさっと作る。販売用のフォトリアルと、動画やVRは外に出す。この分担なら、内製側は高価なレンダリング環境を持つ必要がなく、外注費は勝負どころに集中します。

外注費を抑えるコツも、実はシンプルです。資料を一式で渡して手戻りをなくすこと、複数カットをまとめて発注すること、用途に合わせて品質グレードを使い分けること。この3つで、同じ予算でも作れる枚数は変わります。資料の揃え方は「建築パースの依頼に必要な図面・資料一覧」をご覧ください。

ラフは社内、仕上げは外注というハイブリッド運用で制作した事例
ラフは社内、仕上げは外注というハイブリッド運用で制作した事例

外注費の目安が知りたい方へ

外注の検討には、当然ながら相場観が要ります。1枚あたりの費用がどう決まるのか、カット数や品質でどう変わるのかは「建築パースの費用相場はいくら?」で詳しく解説しています。当社の具体的な料金は、品質グレード別の料金プランのページで公開しています。

Basic9studioは、日本とベトナムの2拠点体制で制作しています。スタッフは建築とデザインの教育を受けたメンバーで、日本企業との取引経験を重ねてきました。品質はGrade B、A、Sの3段階から選べるので、検討用から広告用まで、ハイブリッド運用の外注先としてちょうど使いやすい構成になっています。対応範囲と事例は建築パース制作サービスのページをご覧ください。

よくあるご質問

内製化を目指しつつ、当面は外注という使い方はできますか

できますし、実際に多いパターンです。外注で品質の基準を体感しておくと、内製化したときの目標水準も明確になります。

1枚だけの外注でも割高になりませんか

1枚から受ける会社がほとんどですし、単価も枚数割引がないだけで極端には変わりません。それよりも、社内で1枚作るための半日、1日の機会費用と比べてみてください。

外注先を変えるたびに品質がぶれるのが不安です

最初の1、2案件で、仕上げの好みと修正のルールをすり合わせておくと安定します。参考イメージと過去の採用パースを共有してもらえれば、こちらで御社の「基準の絵」を再現します。

AIで内製すれば安く済むのではないですか

検討初期のイメージ出しには有効です。ただ、図面との整合が要る絵や、広告に使える精度の絵は、現状のAI単独では作れません。AIと従来CGの組み合わせ方は、「AI 建築パース:制作現場でのAI活用方法」で詳しく書いています。

まとめ。量で決めて、質で使い分ける

建築パースの内製と外注は、月の枚数で損益分岐が決まり、絵の用途で使い分けが決まります。常時大量に使うなら内製に分があり、勝負の絵と繁忙期の波は外注が効きます。多くの会社にとっての現実解は、両方のいいとこ取りをするハイブリッド運用です。

自社の案件構成ならどちらが得か、判断に迷ったら、直近3か月のパース枚数と用途をメモしてご相談ください。内製をすすめるべきケースでは、正直にそうお伝えします。

制作枚数が増えるほど1枚あたりのコストは下がる。大規模案件の俯瞰パース
制作枚数が増えるほど1枚あたりのコストは下がる。大規模案件の俯瞰パース