入稿の前日、印刷会社から連絡が来る。「この画像、解像度が足りません」。

建築パースの解像度は、制作の最後に決めるものと思われがちです。けれど実際には、画像を何に使い、どのくらいの距離で見られるかによって、レンダリングの段階で必要なピクセル数はほぼ決まっています。後から大きくしようとしても、描かれていないディテールは増えません。

この記事では、Web、チラシ、ポスター、工事現場の看板まで、用途別に必要な解像度の目安を早見表にまとめました。印刷サイズからピクセル数を計算する方法も載せていますので、発注前の確認にお使いください。

プールとウッドデッキのある別荘を夕暮れの空と室内照明で描いた外観パース
プールとウッドデッキのある別荘を夕暮れの空と室内照明で描いた外観パース

建築パースの解像度は「ピクセル数」で考える

解像度の話でまず混乱しやすいのが、dpiとピクセル数の関係です。

ピクセル数は、画像そのものが持っている情報量です。横3840×縦2160ピクセルの画像なら、その数だけ点が並んでいます。一方のdpiは、その点を1インチ(25.4mm)にいくつ並べて印刷するかという、出力側の密度を表す数字です。

つまり同じ画像でも、小さく印刷すればdpiは高くなり、大きく引き伸ばせば低くなります。画像ファイルに「72dpi」と書かれていても、それだけで粗いとは限りません。確認すべきなのはピクセル数です。

印刷に必要なピクセル数は、次の式で計算できます。

必要なピクセル数 = 仕上がりサイズ(mm)÷ 25.4 × 必要なdpi

たとえばA4(210×297mm)を350dpiで印刷するなら、210÷25.4×350で横約2,894ピクセル、297÷25.4×350で縦約4,093ピクセルが必要になります。

用途別サイズ早見表

よく使われる用途ごとの目安をまとめました。印刷物の数字は上の式で計算したものです。最終的な条件は、入稿先の印刷会社の指定を必ず確認してください。

用途必要なピクセル数の目安補足
Webサイトのメイン画像横1,920px前後表示サイズの1〜1.5倍あれば十分。大きすぎると表示が重くなる
SNS・物件ポータルの掲載画像横1,080〜2,000px媒体ごとに比率が違うため、トリミング前提で余白を持たせる
A4チラシ・パンフレット(350dpi)2,894×4,093px4K(長辺3,840px)をA4の長辺に使うと約328dpi
A3ポスター(350dpi)4,093×5,787px4Kを全面に使うと約232dpi
A1ポスター(150〜200dpi)3,508×4,967〜4,677×6,622px少し離れて見る掲示物の場合
工事現場の看板 1,800×900mm(72dpi)5,102×2,551px数メートル離れて見るため、低めのdpiでも粗さは目立ちにくい

表を見るとわかるとおり、Webで使うだけなら大きな画像は必要ありません。ピクセル数が一気に増えるのは、A3以上の印刷物を近くで見せる場合です。

Web・SNSで使う場合

Webサイトでは、大きすぎる画像はかえって不利になります。読み込みに時間がかかり、スマートフォンで見る方ほど待たされるからです。表示サイズに対して1〜1.5倍程度のピクセル数があれば、高精細な画面でも十分きれいに見えます。

Webで気をつけたいのは、解像度よりも比率です。サイトのメイン画像は横長、Instagramの投稿は正方形や縦長というように、媒体ごとに切り取られ方が違います。一枚のパースを複数の媒体で使い回す予定なら、主役の建物を画面の中央寄りに置き、上下左右を切り取られても困らない余白を残した構図にしておくと安心です。

夕方の光の中、店舗前のテラスを歩く人々を描いた店舗外観パース。横長の構図
夕方の光の中、店舗前のテラスを歩く人々を描いた店舗外観パース。横長の構図

チラシ・パンフレットで使う場合

オフセット印刷のチラシやパンフレットでは、写真やパースの解像度として350dpiがよく指定されます。A4の紙面いっぱいにパースを使うなら、先ほどの計算どおり縦横で約2,900×4,100ピクセルが目安です。

紙面の端まで画像を敷く場合は、仕上がりサイズの外側に塗り足しを求められるのが一般的です。その分だけ、必要なピクセル数もわずかに増えます。塗り足しの幅は印刷会社の指定を確認してください。

もう一つ注意したいのが、パンフレットでよくある「見開きで一枚の大きなパース」です。A4の見開きはA3と同じ大きさになるため、必要なピクセル数は一気に増えます。表紙はA4でも、中面で見開きに使う可能性があるなら、最初に伝えておくと安全です。

大型ポスター・看板で使う場合

サイズが大きくなるほど、必要なdpiは下がっていきます。人は大きな掲示物を、少し離れた位置から全体として眺めるからです。駅のポスターや工事現場の看板が、近づくと意外に粗く見えるのはそのためです。

ただし、例外があります。モデルルームの壁面に貼る大判のパースや、受付の背面に飾るパネルのように、手の届く距離で見られる掲示物です。こうした用途では、サイズが大きくても密度を落としにくく、必要なピクセル数が大きくなります。

大型の出力は、印刷方式や素材によって推奨される条件が大きく変わります。看板やパネルに使う予定がわかっている場合は、印刷会社の入稿条件を確認し、その数字をそのまま制作側に伝えるのが一番確実です。

雪の森に建つ切妻屋根の別荘を、窓の明かりや樹木の細部まで描き込んだCGパース
雪の森に建つ切妻屋根の別荘を、窓の明かりや樹木の細部まで描き込んだCGパース

解像度より先に決めておきたいこと

実務で困りやすいのは、ピクセル数そのものより、比率と余白が後から変わるケースです。

横長で仕上げたパースを、あとから「チラシの表紙なので縦で使いたい」となった場合、切り取るだけでは建物が収まらないことがあります。上部にキャッチコピーを入れたいのに、空の部分が足りないということもあります。こうした変更はトリミングでは解決できず、カメラの設定からやり直す必要が出てきます。

そのため、依頼の時点で次の3点を伝えておくと、後戻りがほとんどなくなります。

  • 主な用途と、最大でどのサイズまで使う可能性があるか
  • 縦位置か横位置か。両方使う可能性があるか
  • 文字やロゴを載せる場所があるか

カメラや構図は、制作の流れでいえば前半で決まる工程です。どの段階で何が決まるのかは、建築パースの制作の流れを7ステップで解説した記事で確認できます。

Basic9studioのパースの解像度

当社の静止画パースは、4K相当の高精細レンダリングに対応しています。料金と対応内容は建築パース外注のご案内ページにGradeごとにまとめています。

上の早見表のとおり、4KはWebやA4のパンフレットであれば足りる解像度です。A3以上のポスターや大判パネルなど、それを超えるサイズで使う予定がある場合は、レンダリングに入る前にご相談ください。

夕日が差し込むリビングダイニングの内観パース
夕日が差し込むリビングダイニングの内観パース

よくあるご質問

Q. 納品された画像を、後から大きく引き伸ばして使えますか?

A. 画像を引き伸ばすと、細部はぼやけます。拡大ツールで見た目を整えることはできますが、描かれていない素材の質感までは再現できません。大きなサイズで使う可能性があるなら、最初の段階で伝えておくのが確実です。

Q. 届いた画像のプロパティに72dpiと書かれています。印刷に使えませんか?

A. dpiの数字だけでは判断できません。ピクセル数を確認して、上の計算式で仕上がりサイズに足りるかを見てください。足りていれば、印刷時のdpiを設定し直すだけで使えます。

Q. Webと印刷の両方で使う場合、どちらに合わせればいいですか?

A. 大きいほう、つまり印刷に合わせます。大きな画像からWeb用に縮小するのは簡単ですが、その逆はできません。

パースの解像度は、仕上がりサイズと見る距離から逆算して決まります。Webだけなら大きな画像は必要なく、A3以上の印刷物を近くで見せる場合に初めて、レンダリングサイズを意識する必要が出てきます。そして実務で一番の手戻りになるのは、ピクセル数よりも比率と余白の変更です。

使い道がまだ固まっていない段階でも、「最大でこのくらいまで使うかもしれない」という見込みがあれば、それを前提に構図と解像度を決められます。Basic9studioの建築パース制作サービスのほか、制作メニューの全体はサービス一覧でご覧いただけます。ご依頼の際は、用途と使う予定のサイズをあわせてお問い合わせフォームからお知らせください。