提出まで、あと10日。図面はまだ動いているのに、パースの手配だけが先に迫ってくる。
設計コンペに参加する事務所の多くが、一度はこの状況を経験しているのではないでしょうか。審査の場では、たくさんの提案が限られた時間の中で見比べられます。図面を読み込んでもらう前に、まず一枚の絵で足を止めてもらえるかどうか。コンペパースは、その最初の数秒を担う資料です。
この記事では、審査員に選ばれるパースの条件と、メインカット・補助カットの組み立て方、締切から逆算した短納期の進め方を、当社が手がけたコンペ案件の制作実績をもとにまとめました。

目次
コンペのパースは、販売用のパースと何が違うのか
販売用のパースは、完成後の建物をできるだけ正確に見せることが目的です。外壁の色も床材も決まっていて、購入を検討する方はその通りの姿を期待しています。
一方で、コンペのパースが伝えるべきなのは「この案は何を大切にしているのか」という構想そのものです。仕上げや設備は、まだ決まっていなくて構いません。審査員が知りたいのは、敷地をどう読み、どんな体験をつくろうとしているのか。そこが一枚で伝わるかどうかが勝負になります。
もう一つの違いは、比べられる相手がいることです。販売用のパースは単独で見られますが、コンペでは他の提案と並べて見られます。正確さだけでは埋もれてしまい、構想の強さがそのまま絵の強さとして問われます。
審査員に選ばれるパースの3つの条件
条件1。コンペパースは一枚でコンセプトを語る
説明文を読まなくても、絵を見ただけで案の核が伝わること。これが最初の条件です。
そのためには、一枚の中に詰め込みすぎないことが大切です。建物の全景も、内部の様子も、周辺の環境も、すべてを一枚で見せようとすると、どれも中途半端になります。この案で一番伝えたいことは何か。そこを一つに絞り、カメラ位置も光も、その一点に向けて決めていきます。
条件2。建築の一番の特徴が主役になっている
たとえば、連続するフレーム状の屋根が特徴の案なら、そのフレームが際立つカメラアングルを選びます。黒いフレームと森の緑のコントラスト、木々の間を抜ける光まで作り込むと、屋根の連なりが一目で印象に残ります。
特徴がはっきりしている案ほど、それを正面から見せる勇気が必要です。無難な斜め45度のアングルが、いつも正解とは限りません。

条件3。敷地と環境の読み取りが伝わる
たとえば、巨大な岩を建築空間の中心に取り込むような大胆な案なら、雪景色や冷たい外気の感じを丁寧に再現し、荒々しい岩肌と、内部からこぼれる温かな光との対比を強めます。周りの環境まで描き込むことで、その敷地でしか成り立たない構想だと伝わりやすくなります。
敷地のどこに価値を見いだしたのか。審査員はそこを見ています。雪、森、岩、海といった環境の要素は、背景として描くのではなく、構想の一部として描くと説得力が変わります。

構成の組み立て方。メインの1枚と補助カットの役割分担
提出物の構成は、メインの1枚とそれを支える補助カットに分けて考えると整理しやすくなります。
メインの1枚は、審査員が最初に目にする絵です。構想の核を最も強く伝えるアングルを選び、提出ボードの中でも一番大きく扱います。補助カットは、メインでは伝えきれない情報を補う役割です。内部での過ごし方、敷地全体の配置、時間帯による表情の違いなど、メインと役割が重ならないように選びます。
見落とされやすいのが、カット同士のトーンの統一です。メインは夕景なのに補助カットは真昼、という組み合わせは、同じ案なのに別の建物のように見えてしまいます。時間帯や色調、人物の入れ方は、全カットで揃えておくのが基本です。
カット数については、提出要項で上限が決まっていることも多いはずです。要項の枚数と判型を最初に共有していただければ、それに合わせて構図を組み立てられます。
短納期で進めるための段取り
コンペのパースは、締切が動かせません。だからこそ、どこから決めるかの順番が仕上がりを左右します。
最初に決めるのは、メインカットのアングルです。設計がまだ動いている段階でも、どの方向から、どの高さで見せるかは先に固められます。アングルが決まれば、モデリングで作り込む範囲も見えてきます。カメラに映らない部分に時間をかけずに済むので、短い期間でも密度の高い1枚に集中できます。
当社のコンペ案件では、コンペ資料、スケッチ、参考イメージをもとに3Dモデルを構築しています。設計途中の段階でも、手元にある資料から進められる部分は少なくありません。種類別の一般的な目安は、建築パースの納期をまとめた記事もあわせてご覧ください。

料金の目安としては、コンペ提案や別荘・リゾートに向けた最高峰グレードのGrade Sが1アングル100,000円(初回50,000円)です。修正は3回まで含まれています。詳しくは建築パース外注のご案内ページをご覧ください。
守秘義務と、提出後の扱い
コンペの案は、審査が終わるまで外に出せない情報です。当社では、未公開のコンペ案件についても秘密保持契約を締結したうえで対応しています。
もう一つ事前に話しておきたいのが、審査後の扱いです。制作したパースを事務所の実績として公開するのか、制作会社側の実績として掲載してよいのか、公開するならいつからか。締切前は誰もが目の前の作業で手一杯になるため、最初の打ち合わせのうちに確認しておくと、後で慌てずに済みます。
よくあるご質問
Q. 締切まで2週間を切っていますが、間に合いますか?
A. 案の規模とカット数によって変わります。まずは締切日と提出要項をお知らせください。メインカットを優先し、補助カットの数を調整するなど、間に合わせるための組み立てをご提案します。
Q. 図面がまだ固まっていない段階でも依頼できますか?
A. はい。スケッチや参考イメージから進められる部分もあります。ただし寸法が変わると作り直しが発生するため、変わりそうな部分と確定している部分を最初に共有していただくのが確実です。
Q. 審査用のボードのレイアウトまでお願いできますか?
A. レイアウト作業まで含めるかどうかは、案件ごとにご相談ください。パースの側では、ボードのレイアウトに合わせて構図や余白、縦横の比率を調整できますので、レイアウト案があれば早めに共有していただくとスムーズです。
コンペのパースに求められるのは、正確さよりも構想の強さです。伝えたいことを一つに絞り、建築の一番の特徴を主役にして、敷地の読み取りを絵の中に込める。この3つが揃うと、たくさんの提案の中でも審査員の手が止まる1枚になります。短納期の案件ほど、メインカットのアングルを最初に決めることが、仕上がりを守る一番の近道です。
Basic9studioが手がけるコンペ向けのパースは建築パース制作サービスで、動画やVR360まで含めた制作メニューはサービス一覧でご覧いただけます。締切日と提出要項が手元にあれば、それだけで段取りのご相談ができますので、お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
