モデルルームの前に立って、こう思われたことはないでしょうか。
——この一室をつくるために、いったいいくらかかっているのだろう。そして会期が終わったら、これはどうなるのだろう。
モデルルームは、たしかに強力です。実際に歩けること、素材に触れられることの説得力は、他では代えがたいものがあります。
ただ同時に、いくつもの制約を抱えています。つくれるのは基本的に一つか二つのタイプだけ。見られるのは現地に足を運べた人だけ。そして会期が終われば、解体して終わりです。
今回はBasic9studioと一緒に、VR360建築パースという選択肢について——それがモデルルームの何を置き換えられて、何は置き換えられないのかまで含めて、正直に見ていきましょう。

VR360建築パースとは、どういうものか
ひとことで言えば、その場に立って、ぐるりと見回せるパースです。
通常のパースは、決められた一方向を切り取った一枚絵です。設計者が選んだアングルから見た景色を見ることになります。
VR360では、視点そのものが見る人に委ねられます。リビングの中央に立ち、振り返れば背後のキッチンが見える。見上げれば天井高が分かり、足元を見れば床材の質感が確認できる。
大切なのは、専用のゴーグルが必須ではないという点です。スマートフォンやパソコンのブラウザから、リンク一つで見られる形が主流になっています。営業担当者がタブレットを差し出して「どうぞ、動かしてみてください」と言える。この手軽さが、実務では効いてきます。
モデルルームと比べて、何が変わるのか
両者を並べてみると、性格の違いがはっきりします。

とくに大きいのは、「全タイプを用意できる」という点です。
分譲マンションで、実際にモデルルームを建てられるのはせいぜい一タイプか二タイプ。残りのタイプを検討している方は、図面と面積表から想像するしかありませんでした。
VR360であれば、全タイプ分を制作できます。「Cタイプの角部屋が気になっているけれど、実物が見られない」という不満に、正面から応えられるようになります。
ただし、正直に申し上げると
VR360がモデルルームを完全に置き換えられるわけではありません。素材に手で触れる感覚、実際の天井高の圧、生活音の響き方——こうした身体的な情報は、画面では伝わりきりません。
現実的には、VR360で候補を絞り、本命だけモデルルームで確かめていただくという組み合わせが、もっとも効率的だと考えています。
VR360が効いてくる場面
では、どういう案件で威力を発揮するのでしょうか。代表的な場面を挙げてみます。

共通しているのは「現地に来る前に、判断材料を渡したい」という状況です
来場前のふるい分けとして
営業の現場で起きがちなのが、来場いただいたものの、そもそも希望条件と合っていなかったというケースです。お互いに時間を使ってしまいます。
事前にVR360を見ていただければ、この空振りが減ります。来場される方は、すでに「見たうえで来ている」ので、商談の中身も濃くなります。
遠方・海外の検討者に向けて
移住や投資目的の検討者は、そもそも気軽に足を運べません。渡航せずに内見できることは、それ自体が強い訴求になります。
着工前の合意形成として
注文住宅では、施主の不安がもっとも大きいのが着工直前です。図面は見た、仕様も決めた。でも本当にこれでいいのか——。
VR360で実際に立った目線を体験していただくと、この不安がかなり和らぎます。そして「やっぱりここは変えたい」という気づきも、着工前なら間に合います。
制作の実例や対応範囲については、VR360建築ビジュアライゼーションのページをご覧ください。
制作するときに、押さえておきたいこと
VR360には、通常のパースとは違う勘所があります。ご依頼前に知っておいていただくと、仕上がりが変わります。
- 視点の位置が、体験の質を決める:一枚絵なら「一番きれいに見える場所」を選べばいい。VR360では、人が実際に立つ場所に置く必要があります。部屋の中央、玄関を入ってすぐ——動線上の自然な位置が基本です。
- どの方向を見ても成立させる:一枚絵では画角の外を作り込まずに済みますが、VR360では全方位が見られます。背後の壁や天井も手を抜けません。そのぶん制作範囲は広くなります。
- 視点数を欲張りすぎない:部屋ごとに置きたくなりますが、多すぎると見る側が迷います。主要な数か所に絞り、移動できるようにするほうが体験は良くなります。
- スマホでの見え方を前提に:多くの方は小さな画面で見ます。細部を作り込むより、空間の広がりと明るさが伝わることを優先します。
- 通信環境を考慮する:高解像度すぎると読み込みが重くなり、離脱につながります。画質と軽さの折り合いが必要です。
通常のパースと、どう組み合わせるか
「VR360があれば、静止画のパースは不要では」と思われるかもしれません。実際には、両方に役割があります。
静止画のパースは、こちらが見せたい一枚を届けるためのもの。チラシの表紙、ウェブのメインビジュアル、看板。見る人の視線をコントロールできることが強みです。
VR360は、相手に委ねるためのもの。じっくり検討したい人に、自由に確かめてもらう。
入口で興味を持ってもらうのが静止画、その先で納得してもらうのがVR360。そう考えると、組み立てがしやすくなります。内観パース制作とあわせてご相談いただくことも多くあります。
Basic9studio – 体験として届く物件プレゼンを、一緒につくる
スタジオアパートから大規模商業施設まで、Basic9studioは1,500件を超える建築ビジュアライゼーションを手がけてきました。その経験から私たちが大切にしているのは、「美しい映像は、リアルで、ちゃんと建てられて、そして人の心を動かせてこそ本当の価値がある」という考え方です。
- 動線から考える視点設計:見栄えではなく、人が実際に立つ位置からVR視点を配置し、体験として自然な流れをつくります。
- 全タイプ展開への対応:モデルルームでは実現できない、全間取りのVR化にも対応します。
- 閲覧環境への最適化:スマートフォンでの見え方と読み込みの軽さを前提に、画質とのバランスを調整します。
よくあるご質問
VRゴーグルがないと見られませんか
必要ありません。スマートフォンやパソコンのブラウザから閲覧できる形式が主流です。指でドラッグしたり、端末を動かしたりして視点を変えられます。ゴーグルをお使いいただくと、より没入感が高まります。
制作にはどんな資料が必要ですか
基本的には通常の内観パースと同じで、図面・仕上表・照明計画があれば進められます。加えて、どの位置に視点を置きたいかのご希望を伺えると、より意図に沿ったものになります。
どのくらいの視点数を用意すればよいですか
物件の規模によりますが、住戸であれば主要な数か所に絞るのが一般的です。すべての部屋に置くよりも、体験の流れを設計したほうが伝わりやすくなります。
公開したあとで、仕様変更を反映できますか
可能です。モデルデータが残っているため、素材や色の変更であれば比較的柔軟に対応できます。これはモデルルームにはない利点です。
モデルルームをやめて、VR360だけにしても大丈夫でしょうか
案件によります。実物に触れる体験が購買判断に直結する物件では、モデルルームの価値は残ります。一方で、全タイプを見せたい、遠方の検討者にも届けたいという課題に対しては、VR360のほうが適しています。まずは何を解決したいかからご相談ください。
モデルルームの前に、VR360という選択肢を
「全タイプ見せられない」「遠方のお客さまに届かない」——そうした課題をお持ちでしたら、VR360が解決策になるかもしれません。
制作実例はVR360建築ビジュアライゼーション、静止画との組み合わせは建築パース制作サービスのページからご覧いただけます。
ぜひ一度Basic9studioにご相談ください。物件の魅力が、いちばん伝わる見せ方を一緒に考えます。
