親の住まいを探しているご家族が、何枚ものパンフレットを机に並べて見比べている。

開設前の介護施設には、その比較の場に出せる写真がありません。それでも入居の相談は、建物が完成するずっと前から始まります。介護施設のパースは、まだ存在しない施設の雰囲気を、入居を考えるご本人やご家族、そして働く場所を探す人たちに先回りして伝えるための資料です。

この記事では、外観と室内それぞれで伝えるべきこと、人物の描き方、大規模な施設の見せ方を、当社が手がけた老人ホームと福祉施設の制作実績をもとにまとめました。

植栽の並ぶ通り沿いに建つ住宅型有料老人ホームを、交差点側から描いた外観パース
植栽の並ぶ通り沿いに建つ住宅型有料老人ホームを、交差点側から描いた外観パース

施設のパースを見るのは誰か

介護・福祉施設のパースは、見る人が多い資料です。誰に向けた一枚なのかを最初に整理しておくと、描くべき内容がはっきりします。

まず、入居を考えるご本人とご家族です。知りたいのは「ここで安心して暮らせるか」。建物の印象や室内の明るさ、居室の広さに目が向きます。施設探しでは、厚生労働省の介護サービス情報公表システムのように、事業所の情報を比べられる仕組みもあり、ご家族は複数の施設を見比べながら候補を絞っていきます。

次に、そこで働く職員の候補です。求人の情報だけでは、職場の雰囲気までは伝わりません。明るく動きやすい職場かどうかは、働く場所を選ぶうえで大切な判断材料になります。

そして、地域の住民や関係者です。新しい施設が街並みの中でどう見えるのかは、地域説明会などで必ず話題にのぼります。

外観で伝えるべきこと。施設らしさを出しすぎない

介護施設の外観で難しいのは、信頼感と親しみやすさの両立です。清潔できちんとした印象は大切ですが、それが行きすぎると、病院や役所のような硬い雰囲気になってしまいます。

大阪市東住吉区の住宅型有料老人ホーム「HIBISU東住吉」の外観パースでは、過度に施設然とした印象を避けながら、清潔感と落ち着きのあるファサードと、周辺の街並みに自然に溶け込む佇まいを表現しました。入居を考えるご本人とご家族の双方が、建物の第一印象で安心できることを意識しています。

植栽や歩道の様子、周辺の建物との関係まで描くと、施設が地域の中に開かれている印象も伝わります。建物だけを切り取るより、「この街で暮らす」というイメージを持ってもらいやすくなります。

室内で伝えるべきこと。光と動線と清潔感

室内のパースで大切なのは、豪華さよりも、毎日の暮らしやすさが伝わることです。

福岡県の社会福祉・医療施設「こぐま学園」では、外観と内観の両方を制作しました。内観では、自然光の入り方、バリアフリー動線のわかりやすさ、清潔感のある素材の表現を重視しています。廊下の幅や手すりの位置、床と壁の色の切り替えといった細部は、利用する人にとっての使いやすさにそのままつながる部分です。

木目の床と手すりが続く明るい廊下に、天窓から自然光が差し込む福祉施設の内観パース
木目の床と手すりが続く明るい廊下に、天窓から自然光が差し込む福祉施設の内観パース

介護施設のパースで描く人物の考え方

人物を入れるかどうかで、パースの印象は大きく変わります。誰もいない空間はきれいに見えますが、そこでどんな時間が流れるのかは伝わりにくくなります。

こぐま学園のパースでも、人物によるアクティビティの表現を取り入れています。入居者と職員が自然に過ごしている様子が描かれていると、見る人は施設の日常を想像しやすくなります。ただし、人を増やしすぎると落ち着かない印象になるため、場面ごとに数人程度に留め、作り込みすぎない自然な動きを意識するのがおすすめです。

職員採用にも使える見せ方

開設前の施設では、入居者の募集と同時に、職員の採用も進めなければなりません。完成前の職場の写真がない状況で、求人サイトや採用ページに載せられる画像は限られます。

採用で使うなら、入居者目線のカットとは少し視点を変えるのも一つの方法です。職員が行き来する廊下やスタッフの動線、明るい共用スペースなど、「ここで働く自分」を想像できるカットがあると、職場選びの材料になります。入居者募集用のパースと同じ3Dモデルから別アングルを起こせるので、最初に両方の用途を共有していただくと効率よく準備できます。

大規模な施設は、全体像も見せる

こぐま学園は、敷地面積14,341㎡、建築面積3,787㎡、延床面積3,180㎡、鉄骨造という規模の施設です。これだけの規模になると、外観の一枚だけでは施設全体の広がりが伝わりません。

当社では、外観では周辺環境との関係やアプローチのしやすさを、内観では自然光とバリアフリー動線を重視し、大規模な施設でありながら威圧感を感じさせない表現を心がけました。敷地全体の配置を見せたい場合は、上空から見下ろす鳥瞰パースも選択肢になります。見せ方の基本は鳥瞰パースとは何かを解説した記事でまとめています。

田園と住宅地に囲まれた敷地に低層の建物と駐車場が広がる、福祉施設の全体を上空から描いた鳥瞰パース
田園と住宅地に囲まれた敷地に低層の建物と駐車場が広がる、福祉施設の全体を上空から描いた鳥瞰パース
芝生の広がる敷地に、緩やかな屋根の低層棟が横に伸びる福祉施設の外観パース
芝生の広がる敷地に、緩やかな屋根の低層棟が横に伸びる福祉施設の外観パース

制作の進め方と費用の目安

制作では、図面、現地写真、参考イメージをもとに3Dモデルを構築します。仕上げ表や家具の配置計画があれば、室内の再現度が上がります。外観と内観をセットで依頼していただくと、施設全体の魅力を一貫したトーンで伝えられます。

HIBISU東住吉とこぐま学園は、いずれも商業施設や高層住宅向けのGrade Aで制作した案件です。Grade Aは1アングル60,000円(初回30,000円)から、修正は3回まで無料で、4回目以降は1回10,000円で対応しています。それぞれの制作内容はHIBISU東住吉の制作実績とこぐま学園の制作実績でご覧いただけます。

よくあるご質問

Q. 外観だけでも依頼できますか?

A. はい。HIBISU東住吉の実績でも、外観パースを制作しています。入居者募集のパンフレットで室内も見せたい場合は、外観と内観をセットにすると、トーンを揃えて仕上げられます。

Q. 人物は入れたほうがいいですか?

A. 施設での過ごし方を伝えたい室内のカットでは、入れることをおすすめします。外観では、人物を控えめにして建物と街並みの関係を見せるほうが伝わりやすい場合もあります。

Q. 開設日が決まっています。いつまでに依頼すればいいですか?

A. パンフレットや求人の掲載開始日から逆算するのが確実です。まずは使う予定の媒体と開始日をお知らせください。それに合わせた進め方をご相談させていただきます。

介護・福祉施設のパースは、入居を考えるご本人とご家族、働く場所を探す職員候補、そして地域の人たちと、見る人の多い資料です。外観では施設らしさを出しすぎずに安心感を、室内では光と動線と清潔感を、人物は自然な日常を伝える程度に描く。この考え方で組み立てると、完成前の施設でも、暮らしと働く姿が想像できる一枚になります。

Basic9studioが手がける介護・福祉施設の外観パースは外観パース制作サービスで、館内の雰囲気まで伝わる動画やVR360はサービス一覧で確認いただけます。開設の予定や使う媒体が決まっていれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。