「AIで作れるなら、パースはもう安くなりますよね」——ここ一年、打ち合わせでよく出るようになった問いです。

答えを先に申し上げると、そう単純ではありません。AIが劇的に速くなった工程はたしかにありますが、まったく手が届かない工程も同じくらいはっきりと存在します。そして納品物の品質は、その線引きをどこに置くかでほぼ決まります。

今回はBasic9studioと一緒に、AI 建築パースの現実的な使いどころを、当社の実際の制作フローに沿って工程ごとに見ていきましょう。

なぜ「AIで作ったパース」をそのまま納品しないのか

生成AIの出力は、見た目だけなら十分に魅力的です。それでも当社が納品物に使わないのには、実務上の理由が三つあります。

寸法が図面と一致しない。生成画像は「それらしい建物」を描いているだけで、図面の寸法を守っているわけではありません。天井高も開口部の大きさも、実物とは別のものになります。提案資料としては、これは致命的です。

同一性が保てない。同じ建物を別アングルで出そうとすると、窓の数が変わる、素材が入れ替わる、といったことが起きます。外観と内観、昼と夜——複数カットが必要な案件では、この性質が決定的な障害になります。

修正が指示どおりに効かない。「この壁だけ木目に変えて、他はそのまま」という修正が通りません。3Dモデルであれば該当マテリアルを差し替えるだけの作業が、生成では画像全体の作り直しになります。

つまりAIは「一枚の絵を早く出す」ことには強く、「同じ建物を、図面どおりに、何枚も、直しながら」出すことには向いていません。建築パースの実務で必要なのは後者です。

AI 建築パース制作の現場|図面をもとに3Dモデルとレンダリング画像を確認するデザイナー
AIは速さを、人は図面どおりであることを担保します

制作フローのどこにAIを入れるか

当社の制作は大きく七つの工程に分かれます。そのうちAIが実際に効くのは、前半と最後の一部です。

効く工程:ヒアリングと方向性のすり合わせ

案件の最初、「こういう雰囲気にしたい」を言葉だけでやり取りするのは、双方にとって時間の無駄が多い部分でした。ここで生成画像を数枚出して並べると、「これは近い」「これは違う」の判断が一往復で済みます。

重要なのは、この画像を完成イメージとしてではなく、参照画像として扱うことです。「この雰囲気で、図面どおりに作る」という合意のための道具であり、そのまま出来上がるものではないと、お互いに理解しておく必要があります。

効く工程:アングル検討

どの位置から見せるかを決める段階でも、生成画像は判断材料になります。ただし最終的なカメラ位置は、3Dモデルを立ててから実際のカメラで確認します。生成画像のパースは物理的に正しくないため、そのまま採用すると成立しない画角になることがあります。

ボードに並べた参照画像を指しながら方向性をすり合わせる設計者と担当者
生成画像は完成イメージではなく、方向性を合わせるための参照画像です

効かない工程:モデリングとライティング

ここが制作時間の大半を占め、かつAIが代替できない部分です。図面を読み、寸法どおりに立体を起こし、素材を割り当て、光を設計する——この工程の精度が、最終的な説得力をそのまま決めます。この部分についてはフォトリアル建築パースの考え方で詳しく扱っています。

限定的に効く工程:仕上げとレタッチ

レンダリング後の背景合成、植栽や人物の追加、空の差し替えといった作業では、AI系のツールが作業速度を上げます。ただしここでも、建物本体には手を入れません。触っていいのは建物以外の環境要素だけ、という線を引いています。

立面図とタブレットに表示した住宅パースを突き合わせて確認する作業
AIを使った場合でも、図面と突き合わせる工程は省けません

AI 建築パースの品質を守るための三つの線引き

AIを制作に取り入れるにあたり、当社が社内ルールとして守っているのは次の三点です。

  1. 建物の形状・寸法・素材はAIに決めさせない。これらは必ず図面から起こします。AIが触れるのは環境要素までです。
  2. 生成画像を提案資料に出さない。参照画像として社内および打ち合わせで使うのは可としますが、「これが完成形です」として提示することはしません。
  3. AIを使った箇所は把握しておく。どのカットのどの部分に生成要素が入っているかを制作側が管理し、修正依頼が来たときに対応できる状態を保ちます。

生成画像そのものの品質をどう評価するかについては、建築デザインにおけるAI画像の品質管理方法で評価基準を整理しています。プロンプトの組み立て方は建築画像生成のプロンプトの記事をご覧ください。

図面を手に複数カットのパースをモニターで確認する制作チーム
どのカットのどこにAI要素が入っているかを把握しておくことが前提です

発注側が確認しておくとよいこと

制作会社を選ぶとき、「AIを使っていますか」と聞くこと自体にはあまり意味がありません。聞くべきなのは、どの工程で、何のために使っているかです。

  • 納品物は図面ベースの3Dモデルから出ているか。ここが曖昧な場合は要注意です。
  • 複数カットで同一性が保証されるか。外観と内観で建物が変わっていないか、という基本的な確認です。
  • 部分修正に対応できるか。「この壁だけ」という指示が通るかどうかで、制作の作り方がわかります。
  • AI利用の範囲を説明できるか。説明できる会社は管理できている会社です。

総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」でも、AIを事業で利用する事業者を含む各主体が取り組むべき「共通の指針」として、透明性とアカウンタビリティが挙げられています。

安さだけを見て選ぶと、生成画像をそのまま納品する事業者に当たることがあります。提案の場でクライアントから寸法を問われたとき、答えられない資料は使えません。見積比較の前に、この一点だけは確認しておく価値があります。

Basic9studio – AIを使う範囲と使わない範囲を明示するパートナー

Basic9studioは、1,500件を超えるCGIプロジェクトの実績をもとに、日本の設計事務所・ハウスメーカー・不動産会社の3DCG建築パース制作を支援しています。AIについては積極的に取り入れつつ、使う範囲を明確に区切って運用しています。

  • 使う範囲:初期の方向性すり合わせ、参考イメージの整理、仕上げ工程での環境要素の補助。
  • 使わない範囲:建物の形状・寸法・素材の決定。ここは必ず図面から起こします。
  • 説明できる状態を保つ:どのカットのどこにAI要素が入っているかを管理し、修正依頼に対応します。
  • 日本語での進行:図面の読み解きから修正指示まで、日本語の窓口で対応します。

AIが設計者の仕事をどこまで担えるのかという論点については、AIは建築家を代替できるのか、およびAIは建築設計プロセスをどのようにサポートするのかで扱っています。

はじめてのご依頼の場合は、初回プロジェクト限定50%オフプログラムをご利用いただけます。図面や参考画像をお持ちであれば概算のお見積りも可能ですので、まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

よくあるご質問

AIで作った画像をそのまま納品してもらえますか

実施しておりません。生成画像は寸法が図面と一致せず、同じ建物を別アングルで出したときに窓の数や素材が変わってしまうためです。当社ではAIを検討段階や仕上げの補助として使い、納品物は必ず図面に基づく3Dモデルからレンダリングしています。

AIを使うと納期は短くなりますか

工程によります。初期のイメージ共有やアングル検討は明らかに速くなります。一方、モデリングと最終レンダリングの時間は変わりません。全体としては、序盤の往復が減ることで結果的に短縮されるケースが多い、という感覚が実態に近いです。

AIを使うと費用は安くなりますか

劇的に安くはなりません。費用の大半はモデリングとライティングの作り込みで、そこはAIが代替できない部分だからです。ただし、方向性のずれによる作り直しが減る分だけ、結果的な総コストは下がることがあります。

図面がない状態でもAIで作れますか

雰囲気を掴むだけなら可能ですが、それは提案資料には使えません。図面がない段階で出た画像は、実際に建つものと寸法も構成も異なります。イメージ共有として社内で使うにとどめ、対外的な資料には図面確定後の正式なパースをお使いください。

Basic9studioはAIをどこまで使っていますか

初期の方向性すり合わせ、参考イメージの整理、そして最終工程での背景素材やレタッチ補助に限定して使っています。建物本体の形状・寸法・素材は、いずれも図面から起こした3Dモデルによるもので、AIが決めることはありません。

まとめ:AIは工程の一部を速くする道具

AIは建築パース制作を置き換えるものではなく、工程の一部を速くする道具です。速くなる部分と、速くしてはいけない部分——その線引きを制作側が説明できるかどうかが、そのまま納品物の品質になります。次のプロジェクトでビジュアルの質を一段引き上げたいとお考えでしたら、ぜひ一度Basic9studioにご相談ください。